私の練習用楽器
(画像は縮小してあります。詳しく見るにはサムネイルをクリックしてください)
概要
2段手鍵盤+足鍵盤、60ストップの電子オルガンもどきです。手鍵盤は
電子ピアノ(YAMAHA P80)とMIDIシンセ(YAMAHA V50)、
ペダルは中古を入手しMIDI鍵盤化したものです。これらを
Linuxが動作するパソコンと接続し、パソコンで音を発生します。
オルガンのサンプリングデータSoundfontとよばれるフォーマットの
ものがフリーでいくつか出回っており、気分に応じて使い分けることが
できます。サンプリングデータ中のストップの音色は任意の鍵盤の
任意のストップに割り当てることができ、これらを自由に重ねることが
できます。但し1鍵盤あたりのストップ数の上限は15です。
コンビネーションメモリは同時に10個使用可能です。ファイルに保存・
呼出が可能ですので曲ごとにレジストレーションをファイルから呼び出すと
いった使い方が可能です。また、コンビネーションメモリは
マウスで呼びだす他、MIDIフットコントローラやUSBジョイスティックのボタン
でも呼び出すことができます。
カプラにより全ての鍵盤から任意の鍵盤への連結ができます。
意味があるかどうかはともかく、手鍵盤から足鍵盤への
連結も可能です。
以上を実現するためにLinux用の
専用ソフトウェアを作成しました。
実際の演奏
製作の目的
パイプオルガンを趣味とする人間にとって、練習環境がないということは大きな問題であります。
オルガンは通常、コンサートホールや教会にしか存在せず、関係者以外の者がアクセスすることは
困難です。そういうわけで普通は、パイプオルガンでの練習を諦め、クラシックタイプ電子オルガンの購入を
考えるわけですが、これには安くても100万円かかり、お手軽ではありません。
この頁では私が、「なるべく安く、かつ容易に」というコンセプト(実際は「安く」より「容易に」が優先される結果となりましたが)に基づき構築したオルガン練習環境について
簡単に解説します。
必要最小限の構成
とりあえず私にとっての「必要最小限」とは、バッハをはじめとするメジャーなオルガン音楽を練習できる環境でした。
そこでまずは上の写真にあるような,手鍵盤1段+ペダルの楽器を組み立てることを考えました。
足鍵盤をMIDIキーボード化し、これを他のMIDIキーボード(手鍵盤)に接続することにより実現します。
発声は手鍵盤に内蔵されている音源により行ないます。これは約20万円で実現しました。
まず問題になるのは、足鍵盤の入手です。パイプオルガンの話題全般を扱うメーリングリストで、
不要なペダルがないか情報を募ったところ、主に電子オルガンを扱う
日本オルガンさん
から中古の足鍵盤があるとの連絡を受け、めでたく入手することができました。同社のウェブサイトを見ると、
中古足鍵盤が売りに出されていることがありますが、いつでも希望の形のものが入手できるとは限らないようです。
私が購入したのは、おそらく30年ほど前のものと思われる、クロダトーン用木製並行コンケーブ30鍵足鍵盤です。
これが最も一般的な形状か思います。これにViscount製ベンチを加え、送料(東京八王子→名古屋)
込で約5万円でした。
手鍵盤は、YAMAHAのスタンド無し電子ピアノ(P-80)を使用しています。これは12万円しました。
冒頭に「なるべく安く」と書きましたが、自分の場合、鍵盤のタッチが重いものが絶対必要と判断したので
これを選んだ次第です。これを買うまでは、ゴミ捨て場で拾った2〜30年前のものと思われるブラザー製
電子オルガンしか持っておらず、これはタッチが非常に軽かったため、本来かなりタッチの軽い部類に入る
7ストップのパイプオルガンの鍵盤がかなり重く感じられ、危機感を抱いていたのです。
ピアノを練習できる環境があれば、手鍵盤にここまで費用をかける必要はないと思いますので、
この「必要最小限の構成」は10万円でできることになります。
スタンドは、ホームセンターで一般的に売られているL字型フレーム(アングル)を組み合わせて作りました。
写真でお分かりの通り、本当にとりあえず使える程度のものです。押すと簡単に揺れます。そのうちなんとかしようと
思っていましたが、2台目の手鍵盤を置けるように拡張したところ、剛性は飛躍的に向上し、かなり強く揺らそうと
してもびくともしなくなりました。
当初、ペダルをまたぐ形で設置できる市販品(約3万円)を買おうとしていましたが、
orgueMLで戴いたアイディアにより、この方法を採用しました。2段仕様で1万円前後といったところです。
以下の写真は、2段鍵盤化した様子です。
ペダルのMIDI鍵盤化作業
買ったままのペダル鍵盤には電気接点が付いていませんでした。まずはキーにスイッチを取り付けることから始めます。
スイッチの種類は、リードスイッチを採用しました。これは、ガラス製のチューブの中に接点が封入されており、
磁石を近づけると片方の接点が引き寄せられ、もう片方の接点に接するというものです。これを使えば、スイッチの
取り付け精度をそれほど気にしなくてもよいと考えました。下の写真をご覧ください。
左の写真の中央がリードスイッチ、その上下にあるのはリードスイッチの土台と、磁石です。
右の写真は磁石をキーに取り付けるために使用した金具です。
リードスイッチは一本300円前後です。
これが30本だと1万円近くになりますから、決して安いものではありません。しかし組み立てや保守作業を容易にするには
よい選択だと思います。余談ですが、リードスイッチについては小学生時代に大きな電卓をバラバラに分解したとき、中に入っていたのを
思い出したのです。当時の電卓は今や貴重品ですからもったいないことをしたものです。
磁石は、二六製作所の通版を利用しました。
大きさ20mm×10mm×4mmのフェライト磁石30個+送料で約1,600円でした。
これらを以下の写真のように取り付けます。
磁石を金具に両面テープで固定し、これを鍵盤にネジ1本で取り付けました。磁石の位置を調節しやすいように
してあります。orgueMLで、ストロークの調整ができることが望ましいというアドヴァイスをいただいたため、
このようにしました。
リードスイッチは、磁石が近付いたときに正しく反応するよう、向きに注意して取り付ける必要があります。
次は、鍵盤の接点と、キーの押下情報をMIDI信号として出力する回路の接続を考えます。
このような回路は、一般的に売られているMIDIキーボードの中に入っているため、これを利用することにします。
最近のMIDIキーボードは、キーを押す強さを感知する機構が備わっているのが普通ですが、このような機能は
今回は不要なだけでなく、作業を繁雑にしかねないと思い、タッチセンス非対応のキーボードを探しました。
大須の電気街を回って探したところ、かろうじて1台だけ見付けることができました。
これは、ミュレディア社の MK-37M という機種です. 2002年2月現在、検索してみるとweb通販でも入手可能です。
価格は8000円前後でした。このようなMIDI鍵盤を選択するときには、ペダルの音域をすべてカバーしていることを
確認することが必要です。この手の安くて小さいキーボードは下がFから始まっており音域が狭いものが多くあります。
中を開けてみると、鍵盤のスイッチの部分には、ゴム接点が用いられていました。
基板には片側の接点と、36本のキーの押下状態を数本の信号線でMIDIコントローラ基板に送れるようにする(と思われる)回路があります。
この基板の上にもう片方の接点(ゴム製)が乗ります。
このようなところに外から配線を引くのは面倒であることや、MIDIコントローラ基板と足鍵盤とをフラットケーブルで接続し脱着を容易にしたい
という理由から、上の写真の基板をコピーしました。
これは基板上にダイオード以外の特殊な部品が一切載っていなかったので可能でありました。IC等が載っていたらこのようなことはしづらいと
思われます。後に2台目の手鍵盤に用いるため入手したMIDI鍵盤の場合、キー接点の基板にICが載っていました。
続いて配線を行ないます。
1本配線するごとにキーを押し、実際に正しく音が出ることを確認しながら作業を進めました。
なお、フラットケーブルは自作PCパーツショップで入手できるIDE用のケーブルを使用しました。
音源について
先に述べたように、音源は当初、電子ピアノの内蔵音源を使用しました。ペダル鍵盤のMIDI出力を、電子ピアノの
MIDI入力に接続し、音を出します。電子ピアノに内蔵されているオルガンの音は、満足できるものではなかったので、
ピアノの音で練習していました。
はじめはペダルを練習できるだけで満足していましたが、そのうちオルガンの音で弾きたくなってきました。
当初より、いつかはSCPOPを
導入することを考えていましたが、オルガンのSoundFontを見付け、PC単体でもリアルな音を
出せることに驚きました。SoundFontを使用するには、Creative社の
SoundBlaster Live!などのサウンドカードが必要ですが、数千円で入手可能です。
SoundFontのファイルは、
Hammersoundのサイトに数多く置かれています。
しばらくは、手鍵盤と足鍵盤を、それぞれ別々のパソコンに接続し、音を混ぜるという方法をとっていました。
専用ソフトウェアの作成
複数の鍵盤を1台のPCに接続し、別々の音色で鳴らしたり、音を重ねたりできるソフトを探しましたが、
なかなか見付かりませんでした。手鍵盤をもう1台増設するにあたり、3台目のPCを用意するのも
不経済で,操作性も悪すぎます。SCPOPでもいいのですが、せっかくSoundFontでPCでも
リアルなオルガンサウンドを出せることや、SCPOPを使うには新規に外部MIDI音源を購入しなければならない、
といった理由から、自分でソフトを作ることにしました。
Linux用で申し訳ないのですが、こちらに
載せてあります。演奏例もここにあります。
詳細は今後、このページに載せます,と書いてから2年が経ちましたが、やっと実行しました。